iPhoneからイヤホンジャックが廃止され、直後にワイヤレスイヤホンの代表格であるAirPodsが発売してから4年あまりが経つ。今ではオーディオ市場を代表するほどのカテゴリーへ成長を遂げている完全ワイヤレスイヤホン(True Wireless Stereo)だが、その最先端商品の実力はどんなものなのか。ヨドバシで試聴の機会を得たので感想をまとめさせて欲しい。
目次
評価ポイント
評価ポイントは以下の9通りだ。内容は以下に記し、各々を5段階評価とする。最後にそれらの相乗平均を総合得点とする。機能が非搭載の場合は得点を1とする。
各機で感想のみを述べるため、先にポイントについての解説をしておく。
低音域…低音の響きについて述べる。解像度と音圧に特に注目する。
中音域…特に主旋律楽器やボーカルの響きについて述べる。特に臨場感を求める。
高音域…ハイハットやクラップなど高音について述べる。解像度や音圧の加減に注目する。
音の感触…全体を通じての感想やどんなシチュエーションに聴こえるか述べる。
ノイズキャンセリング…ノイズキャンセリング機能と物理カット両者に注目する。
外音取り込み…外音の再現性に注目する。外音はヨドバシ店内ノイズを利用。
装着感…筆者の耳にしっかりハマるか、取り外しはしやすいかについて述べる。
接続…ペアリング設定時の簡単さや途切れはないかなどについて述べる。
操作感…イヤホン上での操作のしやすさについて述べる。
なお、耳は十人十色ならぬ千人千耳なので各評価は私の主観であることをご理解いただきたい。「言うてたが聴いたら違うやんか」とか言われてもどうしようもないぜ?
AirPods Pro
ハイエンドTWSの王道となるAirPodsProの評価だ。¥30580という決して安くない値段ながら売れ筋のトップを独走し続けている。聴いた瞬間、その秘密が分かった。
まず音質より先に使いやすさが群を抜いている。ペアリングは端末の蓋を開けるだけ。iPhoneをはじめとするApple製品なら画面下から接続コマンドが自動で現れてくれる。店員曰くデバイス間で同期し着信時にはiPhoneに駆けつけるという便利さの極みがあるそうだ。特殊なイヤーピースのおかげで装着感も良いし、取り外しも楽々。
さらに売りのノイズキャンセリングは他が苦手とする高音域までしっかり消してくれる。外音取り込みは再現性が高く、唯一無二の装着感も相まって身に着けていることを忘れるほどだ。両者のモードの切り替えはイヤホンの露出部をつまむことで可能だが、タップの方がより手軽だと思う。
音質はイヤーピースのおかげもあって低音の音圧が気持ちいいがあくまで無難なものだと感じた。一般的な音楽鑑賞としては驚きの体験とはいかない。全体の感触は普通、ということで。
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WF-1000XM3
続いてはWF-1000XM3。AirPodsProよりも先に登場していて、TWSのトレンドであるアクティブノイズキャンセリングをもたらした。先駆者にして、全体的な能力は高い。
まずは音質。ロックミュージックは中高音域の刺激が強く、クラシックは全体的な広がりを持って鳴らしてくれる。その音の感触はまるで鳴らしている音楽を知っているかのような立ち回りだ。全体的な解像度はTWSの限界があるのか低音や高音の一部で足りないと感じるところは僅かながらあった。
ノイズキャンセリングも高音を少し打ち消せていないと感じるものの、全体的には好印象。外音取り込みは少しこもるが再現性は高い。
気になったのが装着感。露出部が耳の外縁部に当たって痛い。短時間の装着なのに。あと試していないがボディが耳に密着しないため風切りも弱そうだ。
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MOMENTUM True Wireless 2
老舗オーディオメーカーのSENNHEISER(ゼンハイザー)のノイズキャンセリング搭載TWSがこれだ。発売するや否や、TWSに音を求める人が殺到した人気商品。
驚くのはその音質で、中高音域の繊細さは格別だ。ボーカルのエッジの効いた声は空気までも伝えてくるほどの迫力。コーラスの響きも程よく締まっている癖に強い。TWSの音としてこの刺激の強さは別次元の体験だ。全体的な感触としては驚きの体験だが癖の強さが楽曲ごとに良くも悪くも仕事をすると感じたので最高評価は与えなかった。
つけ心地は良く、操作も手軽なタップでフィードバックも頼もしいのだが、ノイズキャンセリングは弱く、良いものを期待してはいけないかな。低音は消えるが中高音は効いているか疑うほどだった。外音取り込みはこもるが精度は高い。
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BOSE QuietComfort Earbuds
BOSEがノイズキャンセリングに拘って作ったワイヤレスイヤホン。とにかくノイキャンがすごいという前評判だったが優れているかというと別にそうでもなく、全体的には無難な印象を受けた。
もちろん無難というのは並の能力しかないわけではない。全体的なバランスがとれており高水準にあるという意味だ。
音質は高中低に均整で、優等生な印象を受ける。ロックからポップまでこなす強い臨場感とクラシックやバラードを表現する解像度がここにある。音を楽しむTWSとしては優れていること間違いなしだと思う。
ノイズキャンセリングは全体的に効くがAirPodsProほどの器用さはないと感じる。外音取り込みの再現性は高いが音が小さい。
気になったのが装着感で、大きなボディを支えるイヤーピースは特殊な形状をしている。その耳の外縁部に軽く引っ掛ける部分が少し気になった。また店員曰くイヤーピースの流用不可なところが困るとのことだ。操作は誤作動防止のためかダブルタップで再生と一時停止を指示するもので、他のTWSと違うため慣れが必要。
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Noble FALCON PRO
この音質はヤベェ!と店員さんがお薦めしてきたのがNobleの完全ワイヤレスイヤホン。ノイズキャンセリング非搭載で3万円超えの価格は割高感があるが、音が本当にすごいらしい。
聴いてみると多ドラっぽい音だ。刺激が強く、尖った高音が強く訴えてくる。実際に構成は2BA+1DDだったが、この小さいボディによく収めたものだ。中高音の刺激を楽しみたい人には素晴らしい完全ワイヤレスイヤホンだろう。
気になったのは接続性とノイズ。ペアリングして音楽を聴こうとすると片耳から聞こえなくなったり止まったりを繰り返した。また、聴いている途中に「ザー」とノイズが入る。なんだこれは。試聴機だから色んな人に使われてそうなっている可能性も否めないが、購入者のレビューを探すと同じ人が見つかる。品質はちょっと心配だ。
OPPO Enco W51
OPPOのEnco W51。ノイズキャンセリングとQi充電を備えたTWSの中では、Ankerに抜かれるまで最安だった。大正義うどん型でマイクは近く取り外しはしやすい。
聴いてみるとドンシャリめの音だが音場の狭さを実感した。音の響きや伸びには欠けていて個人的にはあまり好きではない。でもそれもそのはず、1.5万円だから。ここで比べている2〜3万円のイヤホンに比べて良いことなんて期待していない。これはしょうがないと思う。
ノイズキャンセリングは可もなく不可もなくといったところ。外音取り込みの機能がないのが残念に感じる。OPPO W11に比べてうどんが伸びているため着けていて疲れも少ないし誤操作もなさそうだ。全体的には価格に見合う完成度だと思う。
Technics EAH-AZ70W
そしてトリを務めるのがパナソニックの音響ブランド、Technicsがお送りするEAH-AZ70Wだ。誇張抜きにしても筆者の一番感動したオーディオだ。「完全ワイヤレスもここまで来たか」という店員の評価に頗る共感した。
TWSは小さくて持ち運びが便利だが、音質はそのハードウェアの小ささからどうしても劣ってしまうという偏見をひっくり返した。音場の広さがイヤホンとは思えないほど広大だ。店員も「横に無限」という。ホールで目を閉じて聴くような音響が頭の中で踊る。ヘッドホンかと思うほどの感動的な音を持ち歩けるなんて!低音は弾力を持って、高音は優しくシルキーに。中高音はボーカルがいるかのような臨場感。個々の音のバランスも解像度も素晴らしい。Technics、Good Job!!
ノイズキャンセリングはWF-1000XM3のような感じで無難。AirPodsProには届かないと思う。外音取り込みの音質がこもっていてあまり良くない以外は全体的に得点が高い優等生だと思う。
とにかく音に惚れて筆者は32000という価格(今は2.6万円くらいに落ちている)にも関わらず即決した。これだけすごいオーディオになぜもっと早く会えなかったのか。
みんな違ってみんな良いけど…総合得点を発表しよう。
総合得点を発表しよう。()内は非搭載機能を除外して計算した時の数値だ。私からはもう何も言わない。
1位 Technics EAH-AZ70W 4.28
2位 MOMENTIUM True Wireless 2 4.14
3位BOSE QuietComfort Earbuds 3.97
4位 AirPods Pro 3.89
5位 SONY WF-1000XM3 3.59
6位 NOBLE FALCON PRO 3.03(3.48)
7位 OPPO Enco W51 3.02(3.46)
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